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 家出の末、上京してきた明子にある仕事はえり好みできるほどなく、酒と色の香りにばかり囲まれるように働き始めるにつれ、次第に男への好奇心が心の奥底からせり出してきた。それは明子の静かな生活に転調を来した。以前は、仕事上がりの足で銭湯にむかい、短い黒髪に正味三十グラムのコンディショナーにたっぷり使って、さっぱり清潔になってから、本を読んで眠る、ずいぶん夜遅くまでの読書を普段のお楽しみとしていた明子だったが、最近は店で知り合っただれかを家に招いて、相手との未知な関係性の余白を書き込み続けるのであった。

 誰かとはむろん、男のことである……。

 明け方に気持ちよく気を失って、昼過ぎに言葉の氾濫するベッドで目を覚ました明子の眉をしかめさせるのは、寝不足気味のけだるさと、カーテンもかかっていない窓ガラスから突き刺す紫外線にやられ、顔に薄茶色の斑点を設けたりしないだろうかという憂慮であった。おそらく両方のいらつきのあいだをふりこのように行ったり来たりしているうちに、いつも完全に目を覚ましてしまう。

 すでに客人のいなくなった部屋を見渡せば、缶ビールやつまみが散らばり、机には、いくらか申し訳ない程度の金銭が置いてあった。畳にはメイド服が乱雑に脱ぎ捨てられていた。これ男の嗜好によって持ち込まれたものである。一晩の盲愛をほしいままにした痕跡が、たった一人残された明子の眼にはさびしく映った。自分は若雌ゆえ価値がある。シミやシワだらけのよれた姿になれば、いつか自分も衣のように脱ぎ捨てられてしまうだろう。明子は白壁の覆う部屋でぽつり、思った。それは同時に自身を長年塞いできた錠前があっさり外れた証であった。

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☆こんごの放蕩日☆

9/14(土)【出店】高円寺一箱古本市 11:00-17:00

​秋に読書どうすか?

9/26(金)【イベント】♡放蕩ちゃんの本屋メイド喫茶へようこそ!(⩌⩊⩌)♡

 会場:早稲田あかね 日付と時間:9/26(金)19:00-11:00

文壇バー早稲田あかねさんの雰囲気のなか、放蕩ちゃんがオムライスを作ったりドリンクを作ったり本を売ったりするイベントです。もちろん文学談義も◎ チャージは300円。お酒は300円からです♡オムライス作るよ♡

9/29(月)【店番】ISB books 15:00-20:00 ドリンクなし 会話あり

    場所:むつみ荘そば (阿佐ヶ谷駅徒歩7分)

9/30(火)【店番】ISB books 15:00-20:00 ドリンクなし 会話あり

    場所:むつみ荘そば (阿佐ヶ谷駅徒歩7分)

​本店・本屋の実験室にて、
​放蕩書店が展開中です。

高円寺駅より徒歩五分のシェア棚本屋にて、一箱棚主をやっています。

 ZINEをはじめ、純文学、思想、批評、写真集などのフル本、300円から!

しっくりくる本を読みたくなったら、

ぜひ足をおはこびください。

​ 放蕩ちゃんもたまに店番します。

※営業時間は14:00-20:00

※​月曜日が定休日です。

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